心を静めて筆を入れる-写経-

あまりにも負担の多い現代で

 

現代社会は、子供から大人まであまりにも忙しく、身体的、精神的にもストレスの多い時代と言われています。

そんな中、人は自然を感じに外へ出たりセラピーに通ったりして、少しでも負担を軽減させよう、癒されようとさまざまな手段を考えます。

日本では、心の安らぎを得たい時、『写経をする』という方法があります。

写経って?

写経とは、仏教の経文を書き写すことです。もともとは、印刷技術のない時代、中国から持ち帰った経文を広めるために、書き写したことが始まりと言われています。

書き写すものは、経文に限らず、仏様を書き写す写佛などがあります。どれも、功徳(神仏からよい報いを与えられるようなよい行い、世のため、人のためになるよい行い)を得られる行いとして、僧侶の修行のひとつとして行われています。

座禅と写経

 

近年、日本の文化に触れたい海外旅行者が、坐禅体験することが増えています。

座禅は、姿勢を正して座った状態で精神統一を行います。
姿勢・呼吸・心を調えるのが座禅の基本です。姿勢を正し、心を落ち着かせて一筆一筆入れていく写経と通ずるところがあり、座禅と写経・写佛をセットで体験できるところが日本各地にあります。

大山で体験するには

 

そんな写経・写佛の体験ができるのが宿坊です。

宿坊は本来、僧侶、または参拝者のための宿泊施設です。現在では一般観光客などの宿泊も受け入れている施設が増え、社寺文化の体験ができることで人気です。

大山には、大山寺山門前に宿坊『山楽荘』があり、こちらで写経・写佛体験ができます。

参道の一番奥にあり、さらに石段を登ると大山寺へと続きます。

緑豊かな場所で、街の喧騒など聞こえてきません。神聖な空気を感じ、別世界にいるような感覚に包まれます。そんな特別な空間の一室で、写経を行います。

文字に現れる雑念

 

取材当日、I+[イット]制作スタッフの車がパンクして、大遅刻する事態に!
約束の時間に大幅に遅れて到着しても、住職は優しい笑顔で迎えてくれて、やり方を丁寧に説明してくださいました。

住職は説明が終わると席を外してくださいます。周りを気にせず、集中して写経に取り組めます。

正座で書き進めていくので、慣れていないと足が痺れてきます。「足が痛い」や「ペンがかすれてきたな」など、色んな雑念が入った途端に字がぶれてきます。自分の感情がとてもストレートに表れるのを感じました。

回数を重ね、習慣にする事で、最後までぶれずに書けた達成感と、集中力が増したことを実感できるのです。

書き慣れたもので丁寧に

写経・写佛はなにも筆で書く必要はありません。ボールペンや鉛筆、描き慣れたもので書いて構いません。
ポイントは心を落ち着かせること。どんなに下手でも、書き損じてしまっても問題ではありません。

写佛はどこから書いても良いですが、白毫(眉間にある円形の毛)と眼は最後に筆を入れ、瞳を黒く塗ったら完成です。

一筆一筆集中して、無心になって書いた結果、書き終える頃には不思議と心がスッキリしています。

写経・写佛は仏様そのものです。書き終えていらないからといって丸めて捨ててはいけません。飾ったり保管しておくか、お焚き上げをしてもらいます。

現代の私たちに必要なもの

 

近年、ストレスをかかえやすい社会で、子どものうちから瞑想を取り入れている学校もあります。瞑想も目を閉じ、心を無にして集中する事で、リラックス効果と集中力アップが期待できるそうです。現に効果が出ている学校もあるのだとか。

写経も瞑想に通ずるところがあります。
写経は、元々は宗教的な意味合いがありましたが、現代では宗教・宗派とは無関係に精神統一・精神鍛錬として行う人が増えています。

日常を忘れ、心の平穏と願望成就の祈りを込めて行うことで、自分を見つめ直す良い機会になります。

宿坊・観証院 山楽荘

鳥取県西伯郡大山町大山14
0859-52-2006